僕がこのイングランドで過ごした生活は、毎日が驚きの連続で、何もかもが初めてで、とても貴重な体験ばかりでした

木村 興二君
2003年9月―2004年5月までサフォーク・カレッジのフットボール部に所属。カレッジ終了後は日本へ帰国し、プロテストを受験する予定。

初めは走ることが中心で、正直嫌気も。でも、無口な僕にチームメイトが話しかけてくれて、ほっ…

僕がフットボールの練習をここで初めたのは、昨夏(2003年7月)からでした。もちろん、とても緊張して入りましたが、それよりもどんな練習をやるのかが楽しみでした。驚いたことに、夏休み期間中の練習は走ってばかりいました。ランチを持って行き、午前十時から午後の三時まで本当に走ってばかりいました。時にはボールに一度も触らない時もありました。正直、毎日の練習が嫌になったこともあります。このまま走ってばかりいるのでは「イングランドに来た意味がない!」と、少しやる気がなくなりました。
チームメイトも何度か愚痴をこぼしていました。この時、まだ僕はあまりしゃべれず、チームメイトとも仲良くなることが出来ませんでしたが、こんな無口な僕に向こうから話しかけてくる事が多く、ほっとすることもあり、日本では味わえない暖かさを感じました。
九月からは、学校が始まりました。日本人は僕だけで、ここでも僕は無口でただ授業に参加しているだけでした。他の生徒は質問をしたり、楽しそうに授業をしているのを見て、このままではいけないと思い、何度か意見を述べようとしたのですが、言葉が伝わらず自分の英語力が情けなく思えました。

リーグ戦がスタートすると、戦術中心の練習内容で、監督もコーチも納得し理解するまで説明。

フットボールの方もリーグ戦が始まり、練習内容も今までとは変わってきました。いろいろな戦術を学びましたが、特に多かったのがボールを持っていないときの動き(Off the Ball)の練習です。どんな練習の時でも必ず監督やコーチがこの事について説明します。間違った動きをしたらすぐに練習を止め、修正点を教えてくれます。僕も何度か注意をされましたが、理解と納得できるまで教えてくれました。

「うまい」より「強い」英国のフットボールに驚き、チームメイトの祝福の抱擁に感動。

そして、初めての試合の日。ものすごい緊張をしたのを今でも覚えています。試合をやっていて分かった事は、こっちのフットボールは「うまい」と言うよりも、「強い」と言うことです。とにかく当たりが強くボールキープをしていると、ところかまわずスライディングが来ます。こっちは芝のグラウンドなのでスライディングは当たり前なのです。僕は後半の途中に日本ではありえない後ろからの強烈なスライディングを受け、怪我のために交代しました。さらに驚いたのがあんなファールでもイエローカードが出なかったことです。僕はとても屈辱的な洗礼を受けました。
それから、その後の試合で僕が初得点をしたときの感動も忘れられない試合でした。僕が得点を決めた時、チームメイトの皆が飛びついてきました。練習ではいつも無口で、無愛想だった僕をみんなが祝福してくれました。この時、僕は「僕もチームの一員なんだ!」と言うことに気づかされました。この日から僕はもっと積極的にチームメイトと話すようになりました。それからは、英語にも慣れてきて毎日が楽しかったです。

チームメイトと英語で一緒に遊び、また一歩、みんなに近づけた喜び。

そんな中、冬休みに行われた代表合宿の試合も楽しかったです。PASEリーグに所属している色々なチームから選抜された選手が集まる合宿です。すごく嬉しかったのは、イギリス人ばかりの中に、僕がその中の一人として選ばれました事です。合宿所は、一人一人に部屋が用意されていてとても驚きました。着いてすぐに練習があり、そこで次の日に行われる試合のメンバーが決まりました。余談ですが、この日、嬉しかった事がありました。夕食を皆で食べた後、僕の他に選ばれた2人のチームメイトとトランプをやったことが僕にとってはとても嬉しかった。「俺って英語使って遊んでるじゃん?」って心の中で嬉しく思いながら、一緒に遊び、また一歩、みんなに近づけたと思いました。
翌日の試合はとても寒く、先発した僕は全然動きが鈍く自分でも情けないと思いました。たくさんのプロクラブのスカウトマン達も見に来ていましたが、その方々の目に止まる様なプレーが出来なかったことが、今でも心残りになっています。
その後の練習や試合はとても寒い日が続いたので毎日が大変でした。朝から雨だったりすると、やる気が起きなくなっていましたが、みんなと話したり自分だけが辛いわけじゃないと思うことによって楽しく過ごすことを心がけました。
チームメイトの誕生日パーティーに行った日も寒い日でしたがその日は寒さも感じないくらい楽しい時を過ごしました。練習では見ることが出来ないくらい皆がきっちりした洋服で、チームメイトの違う一面が見れたのも記憶に残っています。

沢山の人に支えてもらった留学生活

そして、ついにサフォーク・カレッジで参加できる最後のリーグ戦の試合が来てしまいました。僕は気持ちばかりが先走ってしまい、あまり良い動きが出来ませんでした。残念ながら試合も負けてしまいました。試合終了のホイッスルが鳴ったときは、今まで過ごした日々が本当に色々よみがえりました。自分でも思いがけないくらい感情的になり、知らずに涙がこぼれていました。もう皆と一緒に試合をすることは出来ないんだと。帰りのバスに乗っている時、みんなは騒いだりしていましたが、僕はただ「この瞬間はもう戻らないんだ、もう終わってしまったんだ。」と自分のここでの生活を振り返っていました。
リーグ戦は終わってしまいましたが、まだ学校の授業が残っています。それに試合はなくても練習がまだあります。英語もだいぶ上達してきて、今ではリラックスして授業に望めるようになりました。それに残り少ない練習には一日一日を大切にして、学べるもの全てを学びたいと思っています。
僕の思い出は、言葉では言い切れないほどの僕の心の中に残っています。ここで過ごした一年間は、沢山の人に支えてもらいました。常に笑顔で話し、親切にしてくれたホームステイの家族。無愛想だった僕を優しく接してくれたチームメイト。たくさんの戦術と技術を教えてくれた監督とコーチ。そして、一番忘れてはいけないのが、生活をしていく面でサポートしてくれた日本の両親。また、その他にも僕に関わってもらったすべての人に感謝しています。

忘れられないPASEのパーティーと、重要な3つの賞の授賞式

今回のPASEのパーティーは、僕にとっては忘れられない大きな思い出となりました。選手やコーチはみんなスーツで、他の招待客たちもドレスアップし、会場はイングランドならではと言える「パブ」。開始時間とともに人が続々と集まってきました。チームメイトたちの姿がまるで別人のように見えました。普段、学校や練習で会う時の雰囲気ではなく本当にスーツが似合い、僕の目にはとてもカッコよく見えました。みんなは片手にグラスを持ち、にぎやかに話などをして盛り上がっていたけれど、そんな中でも緊張感が感じられました。それは、授賞式があるからです。この授賞式では前々から3人にトロフィーが渡されるとコーチから聞いていました。1つ目の賞は、みんなで投票して誰が一番がんばったかを決め、その人に送られる賞。2つ目は、監督とコーチが決める賞。最後の賞が、学校にも練習にも休まず行った人に送られる賞。誰もがこのどれかの賞に選ばれたいと思っていました。
レニー(コーチ)のマイクアナウンスで授賞式がスタート。まず最初に、3人ずつに全員の名前が呼ばれ、一人ひとりメダルをもらいました。このメダルは全員が貰えますが、それでも僕にとってはとても貴重な物でした。そして、重大なこの3つの賞の受賞者が、順番に発表されました。発表がされている最中に僕は「もっとがんばればよかった」という悔しい気持ちが少しありましたが、自分の成績を振り返れば納得がいきました。前半戦は得点王だったけれど、冬に入ってからの成績は試合を重ねるごとに悪くなっていったのが自分でもわかるからです。それに、この3つの賞をもらった選手たちはみんな受賞に値する選手たちだったからです。

ありがとう、やったー!、僕がもらっていいのか・・・

僕は本当に大きな拍手を送りました。これで、終わったと思いましたが、まだ授賞式は続いていました。次の賞は三年間、このPASEコースに参加した2人の選手に贈られました。よく考えれば、この二人がチームを引っ張ってくれた重要な選手でした。そんな意味も込め、僕の拍手はまた一段と大きくなりました。その後これが最後の表彰だという言葉が出ました。こちらの受賞式のスタイルは、名前を先に言わず、色々と説明をした上で最後に名前を言うスタイルなので、レニーが説明している最中にそれは僕だ!と分かり、僕の心と頭の中はパニックに陥りました。ありがとう、やったー!、僕がもらっていいのか?・・・そして、僕の名前が呼ばれ、立ち上がると同時に、最後の賞だったからもしれませんが、今までで一番大きな拍手喝さいが起きたように思われました。そして、トロフィーをもらいジョン(監督)とレニーと握手をしましたが、さっき、メダルをもらったときよりも重くて厚い握手でした。さらにレニーから、このチームで僕が着ていた背番号11番のユニフォームに選手一人一人のサインが入っている僕だけのユニフォームも、もらいました。なんともいえない感情が心に込み上げてきたのを今でも鮮明に覚えています。

いつも友達みたいな感覚で話してきますが、ジョンもレニーも尊敬できる恩師であると、あらためて実感

席についてもまだ興奮の余韻が少し残っていました。最後の閉めの言葉をレニーとジョンが話しているときに、この二人の存在が本当に大きかったことが分かりました。普段は赤い練習着をきて僕たちに笑ったり、たまに怒ったりしながらサッカーを教えてくれるが、スーツできっちりとした二人の姿は本当に偉大に見えました。ジョンは英語のあまり話せなかった僕を嫌がらず丁寧に色々と僕にサッカーのアドバイスをしてくれました。そして、レニー。彼にはサッカーだけでなく学校のことや生活面などでも本当に助けてもらいました。それに、僕をここに誘ってくれた人でもあります。レニーは僕にいつも友達みたいな感覚で話してきますが、今あらためて、彼を一人の尊敬できる恩師であると実感しました。授賞式が終わると、あとは本当に騒いだり、踊ったりと賑やかなパーティーに戻りました。パブには乗りのいい曲が流れ、僕もチームメイトに誘われホールの真ん中で輪になりながら踊ったり、破目をはずさない程度に騒いだりしました。。顔を笑顔でいっぱいにして踊りながらも、心の中は寂しい気持ちや感謝の気持ちでいっぱいでした。「もうみんなとこうやって騒ぐことはできないかもしれない」「本当にいいチームメイトばかりだった」「もう一年みんなとフットボールがしたい」。こんな気持ちでいても時間は迫り、みんなと写真を何回か撮り、僕たちは別れました。最後にチームメイトの一人が僕に「またこっちに帰ってきて一緒に遊んだりしようよ」と言われたあの言葉は絶対に忘れません。今回のこのPASEパーティーはもう一生味わうことのできない、僕の中では感動的なパーティーになりました。ここまでよくやってきたという自分を褒める気持ちよりも、ここまで色んなことにトライする機会を与えてくれた多くの人への感謝の気持ちを本当に強く持ちました。パーティーが終わって少しの間は感傷的な気持ちにもなっていましたが、ここで過ごしたたくさんの時間とこのトロフィー、思い出のユニフォーム。そしていろいろな人からもらった、たくさんの暖かな言葉を胸にしまい、ここからが新たなスタートとなるよう自分の目標に向かってがんばって行きたいと思います。

ここで一番教わった事は、ファイティング・スピリット

試合終了のホイッスルが鳴るまで、全プレーヤーが闘争心を持ち続けながらプレーしています。皆さんもここに来ればその意味が分ると思います。
最後に、苦労する事も沢山ありましたが、それ以上に得たものもあります。これからここでの生活をする皆さんが、ここでの一年をどう過ごすかは自分次第だと思います。コース期間や1日の時間が長く感じて嫌になることもあると思いますが、このイングランドのフットボールを心と肌で感じ、成長できることを期待しています。そして皆さんが一年間の留学生活を終えたときに、自分の生活を振り返り、沢山の喜びや、悲しみ。それらを含めた沢山の思い出を大切に、今後の将来につなげていって下さい。